昨年の末にアメリカ政府から総額174億ドル(1兆5700億円)の緊急融資を受けることが決まり、とりあえず存続をすることができたアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーですが、最近になって再建に失敗し、破綻するのではないかと言う噂が広がっています。
ビッグ3の破綻によるショックは昨年10月のリーマン・ブラザーズの比では無いと言われているので、この動向は注意して見守らなければならないと思います。
GMをはじめとするビッグ3は今後、再建計画をまとめて2月17日までに提出し、それを政府内で審議した上で実行可能かどうか、計画が妥当かどうかを見極めたうえで融資がおこなわれる運びになっています。再建計画が実行不可能だと判断されれば、融資がおこなわれないだけではなく、これまで借りた分を1ヶ月以内に返済しなくてはならないことになっています。
再建にはリストラによる人員削減と給料引き下げによるコストカットが必須ですが、GMは世界一とも形容されるほど労働組合が強く、再建計画をつくるための従業員との交渉は難航を極めそうです。(労働組合が強い会社ほど、人件費の削減は難しいのです)
GMはもともと、他の自動車メーカーに比べて賃金の水準が高いので(トヨタ自動車と比べると30~40%程度時給が高いそうです)、それを平均まで下げるだけでもかなりのコスト削減になるのですが、労働者を無視して賃下げをおこなうわけにもいかず、経営者の手腕が試されるでしょう。
またそれだけではなく、再建を目指して動くとしても、自動車業界を取り巻く環境はまったく良くありません。昨年の後半から加速度的に表面化した世界同時不況は自動車の販売台数も激減させています。
08年年のアメリカでの自動車販売台数は前年比20%減の1300万台程度になるとみられています。前年比で20%も販売台数が減るのは歴史的な出来事で、大幅な販売台数減少により世界中の自動車メーカーが痛手を追いました。
今年のアメリカでの新車販売台数は前年比よりもやや少ないの1250万台程度だと言われています。数字だけ見れば、やや盛り返すとの予想ですが、この予想も下振れする可能性は十分にあります。
どれだけコストを削減しても、自動車が売れなくては再建も何もありません。
再建計画が達成できないと判断されれば、貸付金の返済を迫られることになっていますが、当然、大赤字のGMにこのお金を準備できる訳がないので、融資が見送られればすなわち倒産ということになります。
仮に倒産するとしても、日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条にのっとって会社の清算をおこなうはずなので、突然の倒産よりは影響は少ないと考えられていますが、昨年の10~11月程度の混乱は起きるかもしれません。
オバマ新大統領の就任で経済の建て直しに期待が掛かりますが、一方で3月のビッグ3による危機説も出ており、まだまだ安心できるのは当分先のようです。
どちらにしても、今後3ヶ月間はビッグ3の動向に注目が必要ですね。